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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
九月二十二日
なかなかよく書いてある。ツルゲネフの散文詩を読んだときから今までこの位面白いものはよまなかった。なかなか感情がこまかい、ユーモラスで女らしいつつましやかさのある文である。非常に暑い。けれども五時頃になると涼しい風が吹いて来たので、しきりにどこかへ行って見たくなって来た。けれども出てからがいやなのでやめることにする。段々私の頭に大変好いときになって来た。河本さんのところへ手紙を出す。「死人の家」をよむ。どうかして頭が少しつかれて居てさほど感興がのらなかった。『時事新報』の写真部から先とった写真を送って来てくれた。
九月二十二日(金曜)
北原氏より書面で「貧しき人々の群」を単行本とすることについて云って来る。奇麗な本として出すのもわるくはないがあまり小さくもあり又雑誌に出したばかりなので気がのらない。けれどもまあ坪内先生にも伺って見てと行く。行きに区役所へ水道のメートル保管証に印をおしによる。自分も気が進まず、必要も感じないなら止めたがよかろうとのこと、マークトゥエンの話など出た。帰りの電車で、まるで呉服屋の云うなりな風をした婦人に会った。自己をまげ従順にならされて居る女は、身のまわりのように、自分が主になってしなければならないときに、出来なくなるらしい。