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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

〔八月の感想〕

〔八月中の重要なる出来事〕

本のことについてだ。中公に電話をかけて、原稿をかえしてもらうことと三十部送って下さるようにとたのむ。二時一寸すぎて車夫に持たせて下さる。早速手紙をつけなければならないところへ書いて送った。漸々起きたばかりにかなり頭も体もつかったので苦しかったけれども、三十冊の本がつまれたときに、自分の頭と能力に対する感謝と、何とも云えないうれしさがこみあげて来た。ほんとうにうれしかった。ありがたかった。この一日ほど私の一生にとって意味あるときは又とあるまい。

私の第二の誕生日であり、命名の日である。

〔八月の感想〕

私の第二の誕生の月と私は呼びたい。

この月のいかに意味深く尊いことであろう。私の希望と、歓喜と、不安、責任の感が、のこりなく盛りあげられたのはこの月なのである。私が死ぬときは八月の中ではあるまいか。私はこの真に私の生活の始まった月が又全生活の幕の閉じられる月たらしめて、何の遺憾も感じないほどこの月は尊いものである。

太陽の栄ゆる八月。私の生命の燃え立った八月。

〔八月中の重要なる出来事〕

二日 千葉先生より大変長く立派なお手紙をいただいた。

六日 坪内先生へ行く。