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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

八月二日

そして火のついたように泣きたてる。額からタラタラ血が出て居るのが、まだ泥水の一杯あるなかに八月の日がムカムカとてる下に、どんなにいやに見えたことか、車屋は一円とられた。

大橋まで行って見る。大きないかりが下りて鳶のものや巡査が立ち、人も大勢行ったり来たりして場末の特殊などよめきを作って居る。

夜父上が雑誌が出来たらあげるところを紙にかきつけて被居っしゃった。

八月二日(水曜)

千葉先生から御返事を下さる。大変に長い尊いものであった。まことにうれしい。喜びなり心遣いなりをほんとうにして下さることを思うと、ほんとうに何と云ってよいか分らない感謝に満ちて来る。母上もよろこび父上も感服して被居しゃった。

夕餐は皮膚科の医者と一緒に自笑軒でなさった。S家系統の人にはどうしても Flank に行かないところが多いと思わずには居られない。「戦争と平和」を沢山よむ。そして感服し感激し、驚ろかされた。ますますトルストイは偉く思われて来るばかりである。あれ丈にどうして書けたのだろう? 同じ人間とは云え、私のどこかにあれ丈の力がこもって居るだろうか? そう思うと、この間の日曜附録にあった武者小路さんの言葉、――一つかべにぶつかるとそれを通って又次の壁を見出す人間にほんとうに自分がなれるであろうか疑問が苦しく起る、若しそうでない