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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
九月十五日
盆おどりは女性的、朝ぎり、砂丘、南島はよかった。樗牛会の賞を得た川端龍子の霊泉由来は分らなかったが西洋画で、今関啓司氏の風景には、日本画の影響をうけたらしい特色を見出せた。乳しぼる家は、うまくはないが、色調に共鳴を感じる。業火と寂光の都は私の心持にはうつらない。彫刻では泣く子の顔を一刀ぼりにして、筋肉の movement を想像させられ、鐘はあんまり技巧的すぎる。ああ云うのはこのまない。眼は非常によかった。あの姿が忘られない。春風駘蕩には、超然としたところがあっていやみげが少ないらしい。父様の御なかの工合が悪くて、機嫌を悪くして被居っしゃる。夜は「鈍色の夢」を少し考えて見る。
九月十五日(金曜)
明日午後十二時半までに小此木先生
『日出新聞』の石井幸平と云う人が来たが、会わなかった。すりつけた眉をしきりに指でさわって居るそうだ。千葉、坪内両先生、古市氏より手紙、又雨が上ってあつくなったので何も出来ないような気がする。聖フランシスの「小さき花」を少しよむ。非常に心持のよいものである。その極度の謙譲は、私にはよく分らないけれどもあるなぐさめは得られる。夜は何と云っても涼しくなって来た。