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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

十一月二十五日

十一月二十六日

天気が少しあやしくなって来たので洋傘を一本持って行く。かえりに銀座でも行って見ようなどと思った。坪内先生はほめて下さった。今月中になさらなければならないものがあって、ゆっくり見ていただけないから、先の方は一人でしたままでよかろうとのことである。大変うれしかった。かえりの電車にのるころから――それより少し前――雨が降って来た番傘を拝借して来た。電車の中で大変可愛いおじいさんを見た。女のように内輪に足を並べて、そのまんなかにかさを一寸はさんで居る。顔中の筋肉が皆下の方に流れて来た形で、小さい小さい二つの目が絶えず私の方を見ては微笑する。ほんとに可愛い。で、私もつい、つりこまれて一寸微笑した。かえりに白山から車夫が二十銭とる。だまってはやったが、車夫だって自分できまりが悪かったろう。

十一月二十六日(日曜)

昨夜からの雨がまだ降って居る。午前中千葉先生のところへあがる。四十位の年頃の女の心持、親心、教育者の苦痛などと云うことからお話がはずんで、とうとうおひるを御馳走になってしまった。大変お気の毒でこまった。かえりに、中西屋で、小さい玩具を一円六銭買って来る。