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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
十一月二十七日
千代紙をも買う。白山の本屋で、『マダム・ボ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)リー』を買って来る。夜は久しぶりで楽な心持になって、人形――首人形――に買って来た千代紙で着物を着せたりする。岩村透氏、田村松魚氏来訪。岩村氏は父の青海波の皿と例のカンドル、スティックをさほどほめないで行かれたそうだ。形から図案があんまり完全すぎると――これの出来たと云われる時代に、これ丈にまとめる思想がなかった――と云われたそうだ。そう云えばもっともにも考えられる。誰にも云わないでこたえるこれ丈の力を作って置きなすったのは如何にも岩村さんらしい。
十一月二十七日(月曜)
一日南風が吹き通した。寒いのにならされた体には、妙にボッテリとした肉感的な風になでられ、むされることがたまらない。頭のしんまで、不愉快になって、妙な焦躁や不安やが湧いて来て機嫌が悪かった。松岡氏が鉱山に立つのを祝って小田切、徳岡夫婦を呼ぶ。松岡氏の夫人は、矢張りどこかあかぬけて、落着いたところがあるが、徳岡氏の妻は、無趣味極まる人なのにおどろいた。一寸も智的なところのない、体ばかり大きい人である。あれで満足出来て、一生をともに出来れば、道三さんも要するに、三越の店員が相当だと思わざるを得ない。