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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

一月三十一日

朝寝をした一日のはかどりの早いのがいやになる。

もう二月になるとそろそろ試験と云うものがやって来る、たまらない。

この一月を非常に複雑に送って私の実質となったものも亦少くないのである。

来月から私は専心に書こう。三月にならないうちに「鈍色の夢」も書けなければならないのである。精々丹精して書きあげたら又どうにかしてもらえる事を信じて居るより仕様がないのである。私は馬鹿である。

一月三十一日(月曜)

今月も終に終ったのである。私は先ず日記をつけ通せそうな事を謝するのである。「貧しき人々の群」第三を書く。ルッソーの女性観にはあれ丈自由平等を称えた人の説としては寧ろ滑稽を感じる程である。

けれ共ルッソーの主唱して居る自然に帰れの言葉は私にも今尚一つの教訓をしめすものである。ニイチェがショペンハウエルの厭世哲学のすべてを死に安らぐ外はないと云う説から抜けてよりつよく生きると云う事に進んだのをどれ位感激してよむかしれないのである。「神よりも真理である」私には真の研究に日夜究々として居るのではないか。私は罪の償として死ぬのより尚生きる方が辛い事であり同情すべき事であると云う事を明かに思ったのである。