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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
三月十九日
三月二十日
今までのどれよりもよく出来た事は信じるけれ共はたしてよいかどうかと云う事はうたがわしい。夜の一時半風呂に入りながらどの位私は泣いた事であろう。
三月十九日(日曜)
私は喜びと不安にせめられて居なければならなかった。
坪内先生の御帰京をきいたが分らないと云う。
どうかして早く見ていただきたい。
どうかして出版したい。
種々の希望と気味悪さがまじって一杯になる。
一日字句の訂正でつぶして仕舞う。
三月二十日(月曜)
独歩の『運命』をかりて来る。
今日で学校もおしまいになった。
境先生の御話には涙がこぼれそうになった。
夜六時半頃から坂本さんの所へ稿を持ってたずねて行った。
行きがけに屋並みの黒いかげから大きな月が上りかけて居るのを見た。大変に気持がよかった。終りの方をきいてもらう。苦しい位によいと云われたけれ共、只嬉しい丈ではない。
帰りに九時すぎ好い月を浴びながら帰った。
佐藤さんの子供が「お父さん死んじゃえばいいそんなもの皆夜店にたたき売っちゃう」と云い一人が「ほんとに早くしんじゃえば好いあのおもちゃ皆ぼくのにしてやる」と云ったと云う。一つの暗示を得た。