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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

六月十七日

まるで教育方針が違うのが明かに分る。

一日中はれたり降ったりしていやな天気である。足駄の歯をなおさせて置く。夜、近所まで帯揚げのしんとピンを買いに行く。ほこりがたたなかったので強い風も割合に心持がよかった。

漢文の先生に例の事を一寸申しあげて置く。

六月十七日(土曜)

Little Women を読む、今日は妙にセンチメンタルになって、夕方にはたまらない心持になって仕舞った。

クープリンの「決闘」をよむ、主人公、ロマショーフ少尉は実に可愛らしい。彼のすぐ自分の事を三人称にして考えて見る癖は私の持って居るのと同じである、左様な心持になって、自分の事を「彼は……」と云うときの心持は私によく分る、先にもう三四年前に一寸読んだことがあったがまるではじめてのものの様な興味と感激を覚えた。

実に立派な作である、クープリンの主人公には……もとより沢山はよんで居ないけれ共「生活の河」の主人公のどれにも愛すべき泣かずに居られない様なところがある。ああ云う風に人を見なければならない。

又ああ云う心持がどこか心の隅になければ人間は情ないものになる。

六月十八日(日曜)

一日雨が降って居る。