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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

六月二十九日

六月三十日

「アンナ・カレニナ」はごくはじめで分らないけれ共、矢張り驚くべきところどころがあり、トルストイの特徴、メレジェコフスキーに云われてることも目立って見える。

六月二十九日(木曜)

石井、対久米氏の会見、久米さんに一寸会う。『戦争と平和』を返してくれる。

もう、私の書いたものの出ることを知って居なさる。母様がおっしゃったのだそうだ。四十を越そうとして居る人の心持、とくに母親の心持は私に分らないところが沢山ある。安積へかえりたくないから東京附近に居ると云って居た。

石井親子で来る。石井が妙に神経的な高笑いをしたりして居るのが妙に響く。息子と云う人も頭はダークな人だ。あの位の年で、あんな口のきき様をするものに、ろくなものは居ない。けれ共とうとうあの脚本――「牛乳屋の兄弟」をすべて滅却して詫び証を書かされた事には同情する。けれ共それは何もあの人の価値を下げる事ではない。此の事件のために、私の両親に彼人の美点の多くが理解されたのはよろこぶべきことである。

六月三十日(金曜)

午前中坪内先生の所へ行って、『中央公論』の方の御話をして置く。あまり長いから若しだめだったら単行本にして新潮か春陽堂から出すことにきめて来る。