轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

松平源次郎はただ一人で、裏山づたいに、例の万太郎主従が根城としている錦霜軒の方へ足を運んでいる。――刻限は、ちょうど八ツか九ツ時分でしょう、遙かな、本丸、二の丸の深殿の灯も消えて、富士見番所のお櫓の灯だけが宙にボッとにじんでいます。

彼が、暫く附近に身を隠していると、やがて錦霜軒の戸があいて、例によって身軽にいでたちをした万太郎主従の影が、忍び足にそこを出て行こうとする気配でした。

ばらっと、物蔭をとび出した源次郎は、不意に、二人の前にあらわれて、

「尾州様、しばらくお止りを」

小膝を折って、いんぎんに申します。

ぎょッとしたらしい万太郎は、足をひいて、

「誰じゃ?」

と鋭い目を以て暗をさぐる。

「小姓番の松平源次郎にござります」

すかして見た彼の背丈や輪郭、ははア、さてはいつぞやの明け方、広芝の先で、曲者と誤って組み仆した一方のはこの男であるな――と思い当りましたが、万太郎は空うそぶいて、

「なに、小姓番の松平源次郎と申すか。その源次郎が、何用があってここへ参った」

「お上の御口上をうけまして」

「ふーむ、この万太郎に、将軍家から?」

「はい」

「何じゃ。承ろう」