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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

寥々とした星ばかりならいいが、消えなんとする燈心の細い焔が、いやな陰気の這い廻るのを目に見せます。

万太郎はいぶかしげに、また、ことばかず少なく。

「白骨……誰の白骨?」

「白骨に名はござらぬ。想像で申そうならば、羅馬の貴人、ピオのであろうか」

「…………」

初めて彼は、ここに至って、吉宗がいつか自分の目的を知り、その目的の線を越して、鼻をあかせてみせるのかと気づいたらしく、口を緘して、彼の横顔をちらと睨めました。

「塚をあばいた時は、その土を祭るものじゃそうな。で、一緒に出た夜光珠の短刀と共に、ここに、こうして霊を祭っておいた」

いわれて、彼がふと見ると、なるほど、白骨の壺のそばに、白絹をもって包んだ横笛ぐらいな長さのものがおいてある。

初めは、左まででなかった万太郎も、その白絹にに包まれたものを思うと、矢も楯もなく、吉宗をつきたおしても、それを奪って、天へかけ去りたいような衝動を抑えきれませんでした。

だが、相手はこうしておれの羨望をながめてひとりで愉悦を感じているのだ、と心づくと、彼の気性は、意地でもそれを見たいなどという気振りを出させない。

「それは飛んだお拾い物だ」