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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「さあ? ……」と、三人は顔を見合している。
これはいと易いことに似て、甚だ難題に考えられたに違いありますまい。
なぜかといえば、あの侍の側についている女は、おりんが廊下でちょっと金吾へ声をかけても、決して、快くは思わないふうでありますし、第一彼の起居に影と形のようにつきまとッていて、かつてあの男女が別々によその部屋へ話しに行っているなどという場合をチラとも見た事がありません。
どう考えてみても難題です。
あの女に内密で金吾をよび出してほしいという伝吉の注文はむずかしい。
月江にもおりんにも、これには名案がありそうもない。折角魚見小屋での恩返しにも、できることならして上げたいが。
そう思ってうつ向いていますと、何か、伝吉に妙案があったか一膝すすめて声を落としていうには、
「お嬢様、まことに我儘を申すようですが、今そこでおやりになっていたお綺麗な遊び事……何といいましたッけな、オオそれ、投楽散人の昼寝が発明した投扇興ってやつ、そいつをひとつもう一度、ここでやり直して下さいませんか」
これはやさしい。
またすぐにもできる事ではありますが、そしてどうしようという伝吉の考えなのか。