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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
そうしたら、すぐにお宅へも知らして上げましょう」
お常が、一緒に来るというのを無理に帰して彼女は、そこから久米川に沿って歩みだしました。
すると、間もなく、また彼女を追いかけて来た男があります。お常が帰るとすぐに駆けて来たものらしく、野鍛冶の半五郎が、拝島まで送ってゆくと言って、おりんのあとにつきました。
次郎はすきな子だし、お常は質朴な女だしするが、おりんは前から片目の半五郎の性質の悪いのを聞いているので、その親切もなんとなく気味わるく思われて、
「帰って下さい。ひとりで行きますから」
たって断りましたけれど、半五郎は帰る気ぶりもありません。黙々として尾いて来ます。
しかし、そうして半里ばかり歩くうちに、おりんの懸念も薄らいできました。半五郎がついて来たのは、決して、ほかの邪心をかくしているのではなく、彼もまた、次郎の身を案じて、一刻も早く、その安否が知りたいためだという事が、動作やことばのうちに、正直にあらわれて見えたからです。
「半五郎のような破落者でも、わが子の心配には、あんな素直な人間になって、しおれ返って心配しているものを」
おりんは御隠家様の憂うつを、いとどお気の毒に思いやりました。