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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
そして、久米之丞の浪宅を訪れたら、そこに、何かの手懸りがあるようにと、次郎の親のためにも念じずにはおられません。
程なく七ツ下りも少しすぎて、拝島の岡にたどりつきました。
岡の上の落葉松の林が、うすずく陽に赤く染められて仰がれます。関久米之丞の浪宅の屋根は、そこより低い所の真ッ黄色な雑木の葉がくれに黒く見える。
例の荒れはてた岡の屋敷。
くずれた土塀には蔓草の葉が縦横に這い、骨ばかりな冠木門は、あらかた雑草に埋められております。
そこを通ったおりんと半五郎は、いくら郷士の住居でも、これはあまりな荒れようとあきれながら、母屋の前にかかりましたが、いくらおとずれても久米之丞の返辞がないので、
「留守であろうか」
と、がっかりして辺りを見廻しました。
されば、いくら訪れても、返辞がないのは当然でした。この荒れ屋敷に住む関久米之丞は、いつかここへ駒をよせた月江と共に八王子の町に向い、あれから小仏越えにかかって自分の野望を遂げようとしたため、かえって、月江を谷底へ失い、おのれは通りすがった日本左衛門と先生金右衛門のために殺害されてしまっている。
その死骸さえ断崖へ蹴込まれて、たれひとり彼の死を里へ伝えたものもありませんから、骨ばかりの冠木門と朽ちはてた母屋の住居は、落葉や秋草の離々たる岡に、今もって帰らぬ主人に待ち