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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
また、かすかに生命の保持をいとなんでいる胃ぶくろの方でも、十何時間目に一回送られるわずかな食物を原則として、当然、生理経済をやってきますので、なるべく肉体の所持者に身うごきをいましめ、ムダな口をきくなと命令し、多量なカロリーを消耗するすべての考えごとなどは、最も不生産的なものとして一番早く衰えてくるようです。
雲霧などがしばしば経験している、あの伝馬牢とよぶ獄舎などは、ここから見れば、まだまだ立派な人間世界です。ともかくあそこなどでは、夜の果てには明けがあり、昼間になれば夜に入るという変化がある。貨幣の力も行われれば、性慾のもだえもあれば希望もある。
ところが、ここにはすべてがない。
光明、希望、金力、争闘、邪智、愛慾、それがありません。喜怒哀楽、失意得意、それらの生活の変化もあろうとしてもありません。まったく無音無色のなかに無神経な冬眠をジッとつづけている蟇みたいなものです。蟇といわなければ神様のような人間になっている。
――だが。
雲霧はまだそんなでもない。
彼と新助とは新米なので、多少の怪訝をもったり不安をもつだけの余裕を残しておりますが、いつかしら、