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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
あざやかな小遣い取りの仕事もする。
そういうお粂が、真間の紅葉見でどういうことがあったのか、とにかく、相良金吾にはよほど打ち込んでいた様子です。そして、日がふればふるほど、金吾をこの家から去らしたくない、その手段には微量な毒を盛って、いつまでもいつまでも、男を青い皮膚の色にさせて、この密室にとりこめて置こうとしている。
そうした愛と毒心の矛盾に立ってお粂は今またそこで、
「相良さん、目をおさましなさいな。御飯ができましたから……ね、相良さん」
と、今度はほんとに肩を抱いて起しかけましたが、それを聞くとどこかでまた、笑うらしい濁み声がして、
「おやおや、朝ッぱらから……は、は、は、は、どうもお安くないことですな」
襟すじへスウと風が来たので、お粂はムカッとしてうしろの櫺子窓を見ました。案の定です、そこの小障子を四寸ほどあけて、外から罪なところを覗き見している馬の如き長い面が、
「どうも飛んだところを拝見しました」
と、げらげら笑いながら謝っている。
謝るくらいなら引ッ込めばよいのに、なおずウずしく馬面を貼りつけているので、お粂の仲の町張りな癇ぺきはいッぺんにそこへ叩きつけざるを得なくなりまして、