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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

――すると、その足音を聞きとめたか、四方の樹の蔭から、ぽかと、四ツ五ツの提灯が螢のように飛び出して、それに幾人もの人影を加え、ぱらぱらとお蝶の周囲に集まって来るのでした。

見ると、提灯には一つ一つ、明らかに「御用」と記してありますから、さてはと、日本左衛門はギョッとして笹むらの中へ身を伏せましたが、意外なことにはお蝶はすこしも驚いた様子が見えない。

いや、驚かないばかりではありません。

「あら、梅市、安蔵、そのほかみんな、山の者達じゃないか、何しにこんな所へ来ているの?」

「ヨハン様のお申し付けで、石神堂を見張っているのでございます。どうやらこの間道は、誰やら一度通ったらしい形跡があるので」

「あるとすれば、いつぞや私を追いかけて来た、相良金吾かも知れない。先でも、この頃は薄々覚ってきたようだからね」

「そこへ足を踏み込むのは、虎の穴へはいるのも同然で、ずいぶん危なッかしい仕事だと思いますが……」

寄り集まった明りの中には、かの山岳切支丹族の人形師の梅市の顔や、蓑直しの安蔵の顔などが、憂わしげに見出されました。

「あぶない事は、素足で刃渡りをするようなものさ。