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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
煙草色の船
そこは、城内御薬園の一部。
北の境から九十六歩、東の崖から四十四歩、三角線をえがいて中心にあたる所、人参畑の血塚です。
四方をかこむは、高々とした榛の木で、赤い芽ざしの浅く染められているのみですから、梢を透いてあたる太陽の木漏れ陽は、地上に美しい光線の斑を描いて、あるかないかくらいな樹上の微風も、地に燦々とうごいている。
「ところで、他言を禁じるぞ」
こういったのは若き吉宗、床几をすえて、そこに野立をしております。
「はっ」とその左右、指先を土について、居流れたのは近側の旗本、土屋勘解由、水野弥一兵衛、庄司仙三郎、近藤幹雄、中坊陽之助、長坂血槍九郎、本田龍平、こう七人で、吉宗の弓馬の相手に近ごろ選び出された倔強の者たちでした。
また一方には、黒鍬の小早川剛兵衛、小姓組の松平源次郎、頭をさげて森としております。
吉宗は平服、それも例の素服、旗本たちは稽古着を下にのぞかせ、いずれも、的場の弓からこっちへ立ち寄った様子に察しられる。
「突然、その方たちをここに集めて、塚をあばけと申せば、いかにも吉宗が怪を好むやに思うであろうがこれには仔細があることじゃ、源次郎、筑後守からまいった調べを一同に読み聞かせてつかわせ」