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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「な、なんじゃと」

と万太郎は歯がみをしたが、かれの足元には、うかとは寄れない構えが見える。

あくまで、万太郎の無念そうな様子を、子供あしらいに見下ろして、日本左衛門は悠々然と、

「ウム、時に」

ふと語調を変えて、

「おれは今夜から当分の間、影を消すかも知れないが、それについて一言断っておくことは、あのばてれん口書でお前も承知の夜光の短刀だ。――ありゃ屹度、この日本左衛門が探して手に入れるつもりだから、下手な邪魔を入れると承知しねえぞ」

グッと、上から睨みをくれて、うしろへ一歩退いたところを、万太郎の手からサッと一条の青光が飛ぶよと見るまに、

「ちイッ、何をしやがる」

身を沈めた日本左衛門の肩――

キラッと光を縫って外れたのは、さっきから万太郎の手に隙を待たれていた小柄でした。

ふわりと、先の影が屋根の峰を歩みだしたのを目がけると、徳川万太郎、おのれ逃がしては――と勢い込んだ捻り腰に、

「待てッ」

と、飛び上がって大刀の抜打ち!

虹光を走らせた切先は輪を描いて、日本左衛門の肩から胴体を斜めに通り抜けたかと見えました。

さッと、眉の先へ流れて来た閃光を逃がさず、