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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
と古びた喜連格子を見廻しています。
「さ、どこへ隠そうか」
石神堂のぬれ縁に腰をかけて、伊兵衛が振分の中から解き出したのはいうまでもなく、夜光の短刀の来歴をつぶさにした「ばてれん口書」の一帖と、洞白の仮面とを秘めたあの箱です。
「そうさなあ?」
と馬春堂が、改めてこの祠を見るに、木組、庇、手斧のあとなど、どことなく遠い時代のにおいがあって、建物としては甚だ粗末ですが、屋根においかぶさっている二本松と共に、年古ることは想像も及びません。
ギイ……と喜連格子をあけて見ると――、蜘蛛の巣の中に石の祭神の半身が見える。
その石神がまた変っています。毘沙門とも見えれば矢大臣の像とも見えるし、またただの甲胄をつけた武人とも見える。
――土着の人は、何事の願掛けもかなうとかいって、可笑しいことには線香を上げるかと思うと、生魚を上げたりして、その信仰に神と仏の区別をもっていないようです。
もっとも、本体の石神様自身が、神か仏かただの人間か、古色蒼然として、名もなく、わけもわからぬお像を持っているのでありますから、祭祀の方法もまた、これでいいのかも知れません。
「どうだろう、伊兵衛」