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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
文字どおり生きかわり死にかわり、慶長から現在の正徳五年にいたるまで、およそ百二、三十年、今なおここに二官やヨハンにまでうけつがれて来ています。
そして、日本へ赴く時その使徒たる人が、王庁からさずけられる手がかりとしては、わずかに左の数項よりなかったので、それは今――ヨハンからお蝶へ手渡された羊皮の裏表紙にもギリシャ語をもって記されてあるとおりで、
※(ローマ数字1、1-13-21) 日本にて客死せる王族ピオ(かれの名)の最期の地は、関東江戸市を中心とせる僻地なるべし。
※(ローマ数字2、1-13-22) ピオは世襲の夜光珠の短剣をもてり。
※(ローマ数字3、1-13-23) ピオはおそらく日本政府の追捕をおそれて人跡なきところに餓死せしならんか?
※(ローマ数字4、1-13-24) ピオは自然をこのめり、生前バチカノの草原の風趣を愛せり。あるいは江戸市西北の未開の曠野にかくれて、天寿を全うせしか?
※(ローマ数字5、1-13-25) また、ピオは花をこのみ、ことに鶏血草の深紅を強くめずるの癖あり。かれが日本渡航の理想は、バチカノの野に似たる平和の自然に、鶏血草を移植して学林の庭とし、日本における聖カトリック羅馬教の教会を建設するにありき。