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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「ヘエ、そうかな」
と、一時は感心しましたが、二、三日すると、また輿論がちがってきて、
「湯番に聞くと旗本の娘じゃないっていう話だぜ」
と、中風病みの出鱈目が否認される。
「どうもおれも、旗本にしちゃ、あのお供や、あの小間使いの口ぶりが変だと思ったよ」
「第一、屋敷は江戸じゃないそうだ」
「へえ、どこだい」
「どこだが分らないが、御府外の遠方だそうだ」
「あんなに永く湯治場においといて、虫がついたらどうする気だろう。親の気もちが分らないよ」
「次郎という小僧が、その虫の番人にちげえねえ、何しろ、毎年、二月ぐらい入湯に来るというこッたから、何か病気でもあるんだろう」
「気の毒だな、あの若さと、あの縹緻で」
「だが、病人とは見えねえな、いつもきれいだし、外へも出るし」
「病人だってなにも、中風だの、脚気だの、脱肛だのッて、そんな、ぶざまな病気ばかりがあると限ったものじゃない、中には、きれいな病気だッてあるさ」
「きれいな病気ッてものがあるかしら」
「癆よ」
「なるほど、癆※(「やまいだれ+亥」、第3水準1-88-46)かな」
「そういえば癆※(「やまいだれ+亥」、第3水準1-88-46)かもしれない、あんまりきれいだ」