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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
世の中のことは、みんな法斎湯みたいなものだからネ」
話しながら野道を縫って、磯の方へ廻ってゆきますと、よく湯治場にあるやつで、甚だよくない眼つきをした遊び人体の男が三名、
「もすこし先へ行って」
「磯へ出るぜ」
「だからよ……」
あと先を見廻しながら、ふたりのあとからついて行きます。
わるい者が目をつけてゆく。
何かなければいいがと眺めていると、案の如く、海辺へ出てあたりに人なき様子を見廻すと、三人のならず者が、突然、月江のうしろへ飛びかかッて、猿轡を廻そうとしました。
「あれッ」
と、悲鳴をあげかけた小間使いのおりんも、その口を大きな手のひらでふさがれて、小雀のように、磯松の根元へだき倒されましたが、
「おりんや、大丈夫だよ!」
月江の声がこうひびきますと、大の男が襷を切ったように、かの女の肩から黒髪に吹かれて、デンと前へ投げ出されている。
姿に似気ない手のうちに驚いて、おりんの方はあと廻しに、こんどは、三名が一束になって挑みかかりましたが、さッと、身を開くと、
「何をしやるッ」
柳眉に美しい険が立つ――
「女と思うて、ぶしつけな、この上わるさをすると許しませぬぞ」