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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
救いの神――と金吾は心に謝しながら、
「釘勘とやら、どうか、よろしく頼む。しかし、盗賊どもの集合している所へ、この姿では工合が悪かろうな」
「なあに、泥棒だからといって泥棒らしい姿をしている者は一人も居ませんから、かえって、私達もヘタに化けるよりはこのままの方がようございます」
「で、時刻は、夜半頃になるかの」
「もうそろそろ寄っている時分です」
「え、この昼間?」
「急ぎましょう、洞白が人に買われてしまっちゃ何にもならない」
「どこだ、その場所は?」
「まア黙って、私についておいでなさい」
釘勘は人ごみを縫って、サッサと足を速めだしてゆく、その足どりの様子では、浅草観音堂を中心とした盛り場を程遠くないようですが、金吾はいよいよ怪しんで、この真昼中、江戸も目抜きなこの辺にどうして、かれのいうような盗ッ人市などがあるだろうか、どうしても合点がゆかない。
だが、釘勘は迷う風もなく、三社権現の広前をスタスタと斜めに急いで、矢大臣門の所でヒョイとうしろを振向いた。金吾の足が、おそいので、早く、と目で急いているあんばいでした。
大股に寄ってゆくと、
「相良さん、今、三社の前で、すれちがッた女がありましたね」