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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「ヘエ……」と四ツ目屋の新助も、少し勝手がちがって、常の口巧者にも似ずまじまじとその娘を見直さずにはいられない。
なるほど、時世もだいぶ変ったものだ。と考えさせられたものでしょう。
新助の記憶でも、去年の大奥の江島や宮路などという奥女中たちが、芝居者をひきよせたかどで流罪になった騒ぎの当時は、江戸じゅううわさで大変なものだったが、その後、小間物屋として女界の裏を見てあるくと、あんなことは表向きになったのが不運で、別に異とするに足るほどな事件ではないという時世がわかる。
それを思えば、まだ眉も歯も女になっていないこの娘が、紫ちりめんの頭巾を重そうに、親にいえない金のために髪道具を売りにくるくらいは、ぜひのない当世女気質で、まだまだしおらしい方なのかも知れません。
「そりゃ、品によりましては、手前どもでも、引取らないこともございませんがね」
と、新助の調子は急にニベがない。
金をうけとる算段の商人が、いったん、金を出すがわに立つとなると、まるでふところで仮面をスリかえたほど苦もなく全人格をかえてしまうが、今の新助もそんなふうで、ポンと、きせるをハタく音までが、おあいそのないことおびただしく、