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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

次郎の答えは率直です。彼には邪心がありません。邪心のない者は人を疑わない。

殊に万太郎のたずね方がやさしいので、やや感傷的な気持でここに泣いていた次郎は、自分の落度を訴えるように、相手がたぐる話の糸に引き出方れて、その話すところ訴えるところに、少しも包みかくしがないのです。

――自分や月江様が熱海から帰った晩の夜宴のこと。

また、その晩の騒動。

あれからのいきさつ。

調子に乗って石神堂から取出した般若の仮面をつけたまま、逃げた曲者を追ッかけ追い廻し、その揚句、あまり疲れたためこの鍛冶小屋に立ち寄って、両親に甘えながらツイそのまま寝込んでしまったのが、あとで思えば自分の不覚。

ちょうど同じその晩――

父の半五郎が連れて来て奥へ寝かしておいた素性の知れない女が、自分が顔に被って寝ていた般若の仮面をはぎ取り、夜の明けないうちに、何処ともなく姿を消して、あとの寝床はもぬけの殻となっている。

半五郎は怒ッて、その翌日、早速女の行方をさがしに出かけたが、とうとう姿が見つからず、と言って、このまま捨てておくのも業腹だし、仕事も手につかないといって、二、三日前にまた家を飛び出したが、まだ帰って来ないところを見ると、やはり行方が知れないのかも知れません――と次郎はここで元気なく話を区切り、うつろな顔を上げて昼の雲を眺め