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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
ました。
「それが確かに洞白の仮面だ!」
万太郎は思わぬ者から、幾多の耳寄りな事実を聞き取って、暗夜の行路に一点の明りを見つけたような心地――
こう分ってみれば、もう高麗村の屋敷を訪れて行くのも無益となりました。
それ以上の急務は、怪しげなその女の髪かたちや特長を知ることですが、生憎と、次郎はそれを見ていませんので、
「半五郎とやらに会って、なお詳しい話を聞きたいと思う故、今夜、そちの家で世話になるぞ」
と、万太郎は鍛冶小屋へ這入ッて、遠慮なく編笠の紐を解く。
そのうちに、次郎の母が戻って来て、立派な侍が上がり込んでいるのに驚いた様子でしたが、訳を聞いて気を休めたらしく、野菜などを煮て夕飯のもてなしを急ぎ初める。
次郎は母親にいいつけられて、薪を割り、掛樋を掛けて、野天に出ている据風呂を沸しています。
「お武家さん」
窓の外から顔を出して――
「風呂がわいたよ。お湯におはいンなさい」
「それは忝い。では一風呂浴びようか」
「ここへ履き物を置いとくぜ」
「大儀だのう」
「え、大儀ッて、おじさん、何のことだい?」
「はははは。貴様、なかなか面白い小僧じゃ」
帯を解いて、ふと見ますと、そこから出た方が近道という次郎の考え、片ちンばの下駄が窓の外にそろえてある。