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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「オヤ」

と、そこで狼連は予定のごとく腕を捲りあげて、

「この阿女め。人が甘い口をきいてやればツケ上がって、おつに澄まし込んでいやがるな」

「おれ達は、この小仏を帳場にしている悪玉ぞろいの人足だ、それに見込みをつけられた以上、どう騒いだところで追ッつかねえんだから、月並な金切り声をあげねえで往生しちまえッ」

ひとりが突然、お蝶の襟がみへつかまると、ひとりは素早く諸足を取って、彼女の体を浮かそうとする。

――最後が来ました。こういう男どもの強迫に出会うと、勃然と、不敵な度胸をもつ彼女ではありますが、悪玉達の月並な科白どおり、ここは小仏の山中です、悲鳴も及ばず助けも届かず、わずかに、帯の間に秘めている九寸足らずの刃物一ツで、この三疋の狼をどうしましょう?

元より、貪慾好色なあぶれ者は、思いがけなく小仏の暗にまぎれ込んだ妖花の一輪を、存分になぐさみ揉みにじッて、甲府か猿橋あたりの廓にでも売り飛ばそうという腹にちがいない。

彼女の身に危機は迫ッているのです。悪玉の毒気と爪は、すでに、手足にかかっています。

アレ――ッ!

当然、そういう悲鳴のあるべき場合を、お蝶は静かに左右の太い腕をもぎ離して、