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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
こんもりした沢の低地に、その下頭小屋の灯がもれて見える。果たして、今夜のお客様は、それらのうちの何の種類か?
「おや、誰か来たぜ」
と、炉べりで何かグタグタと煮ていた男が耳を立てました。
見ると、そこに泊まっているのは雑多です。グッタリと荒壁にもたれて何か考えている旅の男、片隅に首を寄せて、銭の音をさせているこの峠の荷持や馬子、麓から使いに来て足を留めた旅籠の若者など……その他は、等、等、等として置いて足りる十三、四人。
「おお、駆けて来る」
その多種多様な首がヒョイと上がった時と、入口の戸が、勢いよくがらッとひびいたのが同時であります。
「やあ、立場の衆――」
なかで顔なじみの者が、一斉にこういうと、飛び込んで来た三人の男は、雪に吹ッ込まれたように後を閉めて、
「オオひどい目に会った」
と、顔なじみの仲間に割り込んでくる。
「どうしたんだい今頃」
「どうもこうもあったもんか、……ああ驚いた、餓鬼の時からこの小仏で稼いでいるが、今夜ぐらい胆をつぶしたこたアねえ」
と、三人が三人とも、口を合せて顔色を変えているさま、ただ事ならず思われましたので、下頭小屋の燈火に、なんとなく陰気な影が下がって来ました。