轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
と、ふた声ばかり。
不意に、ヨハンと呼びかけた女の声に、静かに祈祷をしていた松明は、総立ちになって狼狽しました。そうでしょう。もしそれが世に隠れて切支丹を奉ずる者の群だったら、素破とばかり、その発覚を恐れる心理に騒がされたはずです。
各の明りはすぐさま踏み消されて、山間の奇怪な幻影は真っ黒にぬり消されました。
「あっ――ヨハンさん」
その幻滅を追うように、お蝶がも一度呼んでみた時、それに答えて来たものは、轟然たる一発の短銃でした。
「やっ?」
二度目の弾は、あわてて姿を隠しかけた日本左衛門の近くをかすッて、ド――ンという音波が眠れる山ふところを揺すぶりました。
どこをどうあるき迷ったあげくか、その翌日には、お蝶は相州津久井県の堺を出て、甲州の郡内に一歩足をふみ入れておりました。
そして、容易ならない旅のしかたをしつつ、ともかくも、彼女の姿を甲府の柳町に見るようになったのは、それからだいぶ日数を費やした後のこと。
そこへ着くまでの間は、たえず、日本左衛門におびやかされている気持でしたが、繁昌な甲府の城下にまぎれこむと、何か気強い気がして、いつかその恐怖も忘れています。