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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
また、それ程までに男を思うというならば、なぜ金吾様のためになる自分の命を、欣んで投げ出さないか、おれには少し、おめえの真実が疑わしい」
「私が死ぬのが、どうして相良さんのためになる?」
「日本左衛門がそう言った。――お粂とのくされ縁がないという証拠を見せて来たならば、いつでも武士らしく、男らしく、果し合いをうけてやろうと」
「…………」
「先のことばも一理がある。おめえがあきらめをつけないうちは、金吾様からあいつに刃を向ける言い分が立たないのだ。言い分というのは武士の名分、主家に対しても同じことなら、世間へ対しても同じこと。また、こちとらなら知らぬこと、武士という気持に生きている金吾様自身の心もゆるすまい」
九兵衛がその老巧な弁にまかせて、諄々として説いて聞かすものですから、お粂もはじめて、不自然に発足した自分の恋が、当然悲恋に終るべき運命にあるものと悟ったらしく、金吾の腕に力のない顔をうつ向けました。
金吾も、そうしている女の腕を、強く捕えているにも堪えないで手を離すと、お粂はそのまま草のなかにくずれて、声を出さずに肩で波を打っています。
「え、お粂さん。