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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
きりょうの美い女だ。それに髪を切られているから、これはどこか城下の茶屋女が、痴情で殺されたものだろう――などと、いっぱしな目明し気取りで、鑑定をつける者がある。
いや、こんな女は、城下の茶屋じゅうで見かけたことがない。という異説も出たりします。
第一この死にかたがどうも怪しい。
評議まちまちの結果でした。
とどのつまり、やはり、これは一応誰か然るべき者か上役の者に来てもらわなければ、この死骸をこうして置いていいか、それともべつな処分をするか、どうにも去就がつかないということになります。
で、話がそうきまると、ひとりの捕手が、合点という風に畷のやぶに飛びこみました。
しばらくすると、篠のそよぎの消えて行った藪の奥で、一声、二声、まろび音に吹かれた呼子笛が尾をひいてひびきます。
初めて、ぼっと提灯が浮いてくる。それも人魂のごとくたった一つ。
どこかに伏せておいたのが、呼子笛に急いて来るのでしょう。
まもなくだんだんそれが近づいて来ると、合図をした組子のひとりが、藪を分けて案内に立つ。
何かしきりとしゃべるのを、明りに添って来る三人が、うなずきながら聞き取っている。