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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

そしてザワザワと畷へすすむ。明りの先にバラバラと虫が飛ぶ。

提灯を手にしているのは、柳沢家の町方与力か、或いは同心程度の捕吏であろう。朱房の十手を前ばさみにしている。

そして、あとの二人というのは、徳川万太郎に目明しの釘勘でした。

大盗の恋

「おい法達、いぶすのはもういい加減にしてくれないか。目に沁みてしようがねえ」

例の鼻寺の方丈に端居して、日本左衛門はしきりと団扇をうごかしています。

榧を折ってはくべていた法達は、煙の中から、脂ぎった顔を振向かせて、

「そうですか。客人がそろったから蚊いぶしも馳走のつもりなのですが」

「もう充分だ。これ以上いぶされちゃ、どいつも、しッぽを出さずにいられまい」

「は、は、は、は、ちげエねえ。今夜の客人をいぶすのは禁物だったかもしれない」

最前ここへ訪ねて来て、そこに居合せた雲霧と四ツ目屋も、声を合せて笑いながら、

「なあに、おれたちは極めつきの白浪だ。このほかに出すしッぽもねえが、御夢想ぐすりなんていういかもので世間様をごまかしている、鼻寺の和尚がいっち先に尻尾を出してしまやあしねえか」

「ひどいことをいうなよ。御夢想ぐすりでもばかにはならんぜ。