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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
手頃だ」
首にかけていた針の荷や、人形箱などを肩からはずすと、三人はひとしく樫の柄を握って、向い合せてきっと立つ。
まず、鍬をもった安蔵が、真紅な植物の根元を目がけて、勢いよくパッと一掘り入れる。
サクッ、サクッ……、
つづいて梅市の鋤や丁二郎の鍬も、土に刃を磨いて太陽にひらめきだす。キメのこまかい黒土の感触のよさは、素人園芸家も武蔵野の土を措いて他国にない味だと言っております、まるで菜根の肉を切るようにみるまに、六尺四方ばかりの土壌がくつがえされて、土の香いが陽炎のように立つなかに、怪奇な赤色の葉や花が捨て土のなかに埋まってゆきました。
三人は、ようやく無言の境に入って、額に汗をうかめてくる。
一尺、二尺――三尺。
ボクリ、ボクリと土の音がするたびに、何か出て来やしまいか、何か手ごたえがして来るだろうと、眼も心も鍬の先にあつまって、他念のない有様です。
淋漓とたれてくる汗、汗にたかる土のハネ。
一坪ばかりの花の根を滅茶滅茶に掘返して、やがて四尺も掘下げてくると、キメの細かい黒土は粘質的な赤に代って、なかなか捗が進まなくなりました。
「暑いぞ」
丁二郎は肌をぬいで、