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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
入れ札。
それは一体どういうことかと疑いながら、むしろ好奇な目で、ころびばてれんの今井二官は、何も気がつかずに娘のお蝶を連れ、神妙に、その中の頭数となって控えております。
入れ札の白洲というのは、いわゆる犯人投票といったような方式で、当時、何か事が迷宮に入った場合にはまま行われたものだと申します。
白洲といっても畳を敷きつめた役宅の広間なのです、正面には山屋敷預りの与力、熊野牛王の神紙二十七枚を三方にのせて前へ置き、側には、机を控えて同心と書役、左の袖部屋にも三、四の下役がおそろしく緊張した体で折目を正している。
で、与力の勘解由は、呼び集めたもの一同へ向って、
「お上の御封庫を荒し、同心河合伝八を殺害した不敵な曲者は、およそ此方にも目ぼしがついておるが、前後の事情、また官庫の附近に落ちていた証拠の品などから察するに、どうも当夜お囲い内から曲者を手引したものがあるらしく思われる」
ジロリと二十七名の頭数を見渡して、なおも一応入れ札を取るに至った理由をのべます。
そして、言い渡しの終りに、
「たとい肉親朋輩の親しい間がらであろうと、必ず隠し立てをいたさぬ事。