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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

見つけられたって、あたしは行くわよ。それよりあんたの方こそ、あたしのようなばアさんと踊っているところ見つけられたりしちゃ、顔にかかわるんじゃない――」

「ばアさんにしちゃ、若さがありすぎるよ。あはは……」

「ばかねえ!」

という二人の軽薄な会話を、弓子は隣の部屋で壁越しに、反吐をはく思いできいていたのだ。

だから、小郷がホールへ行こうと誘った時、

「しめたッ!」

と、思って、桔梗家からついて来たのだった。

果して、二人は来ていた。

午後九時、ホールが一番立て込む時刻だった。

二人はわざと隅の方へ、人ごみから離れて、ステップは余り踏まず、じっと頬をつけたまま、しずかに「クンパルシータ」のいかにもタンゴらしい煽情的なメロディーに酔い、感触に酔うていた。

その二人の方を、弓子は眼ざとく見つけて、彼女の方から巧妙に小郷をリードしながら、寄って行ったのだった。

ふと、望月と視線が合った。

望月は、はっとしたらしかったが、べつに大した狼狽もせず、気障なウインクを送った。

弓子はにやりと笑った。

その拍子にくるりと、弓子はターンした。

小郷と、小郷夫人の真紀子の視線が合うには、絶好の姿勢になったのだ。