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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

二

望月はあわてて、

「しるこ、もう一つ!」

と、注文した。

「今日は……姐さん」

さきに来ている二人の芸者が挨拶した。そして、一番若い妓が、

「――君勇姐さん、これからお稽古どっか」

君勇は鴨川踊で呼物の「笠屋おせん」を踊ることになっていた。

「ううん」

と、君勇は床几に腰を掛けながら、

「――今日は浮気休み」

寂しく笑った。

二

「誰どんにゃ……? 浮気のお相手はんは……」

鼻の低い妓がきくと、去年の十二月、大阪の新町から先斗町へ来て「進駐さん」といわれている芸者が、

「判ってまっしゃないか。桔梗屋のぼんぼんどすやろ」

と、大阪弁と京都弁をチャンポンに使って言った。

君勇が鶴雄に岡惚れしていることは「進駐さん」までが知っているくらい、評判になっていた。もっとも、そういう「進駐さん」自身がまるっきり「肩入れ」していないとは、断言できない。

「へえ……? ぼんぼん……? ほんとにそうなら嬉しいけど……」

と、君勇はうたうように言って、

「ぼんぼんの相手はわてやおへん」

「ほな、ぼんぼんに好きな女子はんおすのンどっか」

と、若い妓がすかさずきいた。

「大ありのコンコンチキ……」