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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

五

弓子は不安よりも好奇心が湧いて来た。

「僕にはこの百円を受けとる権利はない」

「判らないわ」

「僕はあのスピード籤を破りかけてたんだ。それをあんたが教えてくれた。この百円は教えてくれたあんたが受け取る権利がある。僕は金に未練があって、やって来たんじゃないんだ」

鶴雄がそう云うと、弓子は急に、

「あはは……」

男のような声で笑い出した。

「何がおかしい……?」

鶴雄はむっとして、睫毛の長い眼で弓子を睨みつけた。

「だって……」

と、弓子はまだ笑いやまず、

「あなたが云ってるのは全然ロジックになっちゃいないわ」

隣の部屋では、望月が二人の話にじっと耳を傾けていた。

五

「ふん!」

鶴雄は鼻の先で笑った。まるっきり教養のない女とは見えなかったが、ロジックなどという言葉を使うとは些か意外でもあったが、しかし、それが少々いや味でないこともなかった。

「――どうして、ロジックになっていないと言うんだ」

「だって、教えたのはあたしだけど買ったのはあなたでしょう。破る破らないは、あなたの勝手だけど、所有権はたしかにあなたにある筈よ。もっとも、掏るという行為によって、一時この百円の所有権はあたしに移っちゃったけど、それもあくまで一時に過ぎないわよ。