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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

五

今日からうちへ来て下さるんだから、毎日お風呂へはいっていただかないと困るわ」

鶴雄はそう言われると、もう断り切れず、女中に案内されて、しぶしぶ浴室へ行った。

そして、タイル張りの湯槽に浸っていると、ふと脱衣場の戸があいて、誰か着物を脱ぎはじめたらしい気配がした。

五

「おやっ、誰だろう……?」

鶴雄は脱衣場の人影を見て、湯槽の中で思わず固唾をのんだ。

男のいる浴室へ、女がはいって来る筈もないと思ったが、しかしサラサラと聴えて来る衣ずれの音の柔さは、ふと女のようであった。

鶴雄は湯槽の中ではっと身を固くした。

その時、いきなり浴室の硝子戸があいてはいって来たのは宮子であった。

「あッ!」

と、鶴雄は声を立てそうになった。

宮子は一糸もまとわぬ全裸の豊満な、白い肉体をくの字にくねらせながら、湯槽へ近づいて来ると、

「お加減はいかが……?」

にイッとした笑いを浮べた。

鶴雄は口も利けぬくらい驚きながら、山吹教授の言葉をふと想い出した。

「――あの家には出戻り娘がいるからね」

だから、美少年の鶴雄を家庭教師に推薦するのは、躊躇されるね――と山吹教授が言うと、スタンダールの「赤と黒」