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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
五
三好は、キャバレー歌舞伎を出て先斗町へ戻って行く君勇や鈴子や小郷のあとを、ひそかに、しかし執拗につけて行きながら、そんな木屋町の美しさが、かえって恨めしかった。
焼けた大阪とくらべて、何という違いだろう。
かつて、京都は大阪の妾だといわれていた。大阪あっての京都であった。それほど、京都は古障子のように無気力であった。
ところが、今や古障子の紙は新しくはりかえられて、京都は生々とよみがえっている。
旦那の大阪が焼けて、落ちぶれてしまうと、当然妾の京都も一緒に落ちぶれるかと思われたのに、旦那と別れた妾の京都は今は以前にもまして美くしく若返り、日本一の美人になってしまっている。
それが、三好には恨めしかったのだ。
「ちょうど、おれと君勇の関係みたいなもんや」
三好は、焼けなかったことが京都の幸福であると同時に、京都の不幸であることを知らず、ひたすら羨しがっていた。
焼けなかった京都が、その幸福に甘んじていい気になっておれば、やがて焦土の中から起ち上ろうとする大阪の若々しい復興の力に圧されてしまって、再び大阪の妾となる日が来るのだ――ということを知らなかった。