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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
十三
肩から背中へ小刻みにふるえている。
幹男はいきなりお雪ににじり寄って行った。
そしてお雪の顔に手を掛けて起そうとした。
幹男の手に熱い涙がポトリポトリ落ちて来た。
その時、
「お雪!」
と癇高い声が聴えて来た。
宮子の声だ。
お雪はつと起ち上ると、
「はい」
涙を拭きながら廊下へ出た。
宮子は怖い眼をして突っ立っていた。
「お雪! お前いま何をしていたの……?」
「…………」
「応接室にいる女の方、誰なの……?」
宮子はいま風呂から上って、応接室から聴えて来る鶴雄と若い女の声を耳にしたのだ。
「はい、お名前はお言いはれしめへんどした」
「なんぜ、あたしに黙って通したの?」
「はア、あの、若奥様はお風呂どしたさかい……」
「じゃ、断ればいいじゃないの」
その時、応接間のドアがひらいて、弓子はすっと出て来た。
十三
「そんなに叱ってあげちゃ気の毒だわ」
弓子はいきなり言った。
宮子ははっと振り向いた。
「あなたは……」
誰方ですの、と睨みつけると、弓子は、
「あたし……?」
にやりと笑って
「京洛日報の相馬弓子です」
「あ、新聞社の方ですか」
宮子の表情は急に和らいだ。
「はあ」