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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

四

ぼそんと予言者みたいな口を利いた。

鶴雄と弓子ははっと顔を見合せた。

四

「どうだ、そう思わないかね」

と、小田は鶴雄と弓子の顔をかわるがわる見ながら言った。

「――小郷が殺されると思わないかね、もっとも通俗小説だとすればだがね」

鶴雄と弓子は小田がなぜそんなことを言うのか、気味が悪かった。

「じゃ、こんどのあなたの小説は通俗小説になるんですか」

と、鶴雄はきいた。

「残念だが、通俗小説だね。夕刊新聞小説は通俗小説でなくっちゃ読まれないし、だいいちこう偶然が多くっちゃね」

「すると、小郷は必らず殺されるんですね」

「まアね」

「しかし、現実に殺されないとしたら、どうします……? こんどの小説は本当にあったことしか書かないとおっしゃったでしょう?」

「そこだよ、問題は……」

と、小田は言いながら、起ち上ると、

「――この問題は、外へ出て考えようじゃないか」

「ええ」

小田は弓子に言った。

「僕たち今高台寺へ行くところだったんですよ。よかったら、あなたも一緒に行きませんか」

「はア、お伴しますわ」

やがて三人はちぎり家の別館を出た。

玄関を出て、蛸薬師の通りを寺町通りの方へ行った時、鶴雄は、前方を歩いて行く女のうしろ姿を見て、おやっと思った。