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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

十一

と、小田策之助は自信ありげに言った。

「そうでしょうか。僕は掏られたんだと思いますね」

鶴雄は昨日四条河原町のスピード籤の屋台で弓子に掏られた経験から、そう言った。

「そんな莫迦な、君じゃあるまいし……」

と、小田は言っていたが、急に大きな声になって、

「――じゃ、賭けをしよう」

「賭けましょう」

賭けは鶴雄の好むところだった。

「何を賭けよう」

「何でも……」

と、鶴雄は答えた。

「さア何がいいかなア……」

小田は鼻の頭を撫ぜながら考えていたが、急にニヤニヤ笑いながら、鶴雄の前に坐ると、

「――君、賭けというやつは大きい方がいいね、五円や十円を賭けるのは、下足番共か太陽先生のする賭けだ。われわれ夜光虫派はもっとでかいスリルのあるやつを賭けようじゃないか」

「ええ、スリルのあるやつ賛成ですな」

鶴雄は小田という男、案外話せるぞと思いながら言った。

「――しかし、今われわれ夜光虫派とおっしゃいましたが、僕はデカダンス派の仲間入りはごめんですよ」

「そりゃ自由だ。しかしジュリアン・ソレルに憧れて、スリルを求めるのは太陽派じゃないよ」

「一体何を賭けるんですか。命でも賭けますか」