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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

四

「……? ……」

振り向いて、君勇は、

「あっ!」

と、声をのみ、いや、棒をのんだように突っ立って、暫らく口も利けなかった。

浮浪者のような――といっては嘘になるが、とにかくみすぼらしい服装の、四十五、六の男が、古障子のような無気力な顔で、ちょぼんと立っているのだった。

鼻の横のアザに見覚えがある。

一年前に別れた旦那の三好春吉だった。

「君勇久し振りやなア」

三好はなつかしそうに言った。

「ほんまに暫らくどしたなア――お達者どすか」

「うん。まア生きてはいるけど、あんまり達者とはいえん」

「そんなこと……」

「いや、ほんまや、いっそ死んだ方がましや思ってるくらいや」

三好は寂しく笑いながら、弱々しい咳をしていた。

四

「えらい変り方や」

君勇はそんな三好を見ると、さすがに胸が痛んだ。

「おれももう永うない」

三好はぼそんと言ったが、その時、京阪電車が眼の前をよぎって行ったので、三好の声は電車の音に消されて聴えなかった。

信号が変ると、二人は肩を並べて、四条大橋を渡って行った。

春のおぼろ月の淡い光が川原の薄い夜霧を透して加茂の流れにほのかに映っていた。

先斗町の青楼の灯が瞬いているのを見ると、三好は、