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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
三
「ほなお受けさせて貰います」
と言った。
三
君勇は二階へ挨拶に上った。
「おおーけに……」
帰らせていただきますと、両手をつくと、
「なんだ、もう帰るのか」
小田はがっかりしたように、
「――しかし、まアいいや。貰いなら仕方がない。後日また会おうよ」
「へえ、おおーけに。当てにしてますえ」
君勇はあでやかに笑うと、すくっと立ち上ると、すらりとした後姿を見せて、出て行った。
小田はその後姿を見送りながら、
「雪国だね」
と、言った。
「雪国ってなんだ。季節はずれのことを言うなよ」
と島野が言った。
「川端さんの雪国だよ」
「ああ、お駒か」
と、島野も川端康成の「雪国」という小説に出て来る芸者を想い出した。
「あのお駒は実物はあんなに綺麗じゃないそうだね。おれのお駒は実物が綺麗だよ」
と、小田。
「おれのお駒……? ああ、あの君勇を書くのか」
「君も書いてやる。実物以上にスマートに書いてやる。スマートかズマートか知らんがね。あはは……」
その頃君勇は、
「桔梗家へ行けば、鶴雄さんに会えるかも知れない」
と、呟きながら、縄手の通りを抜けて、四条通りの方へ歩いていた。
やがて、四条京阪の前まで来て、ゴーストップを待っていると、ぽんとうしろから肩を敲かれた。