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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

七

学生も今は生活苦に悩んでいる。街頭に立って、キャンデーを売る学生もいる。それが今日の世相だ。

「ところが、おれは芸者や舞妓を道具に使って儲けた金で悠々と飯を食ってるじゃないか」

だから家庭教師になろうとしたのだ。

が、行った先は小郷の家だった。

淫蕩の家の飯は食いたくない。

じゃ、どうすればいいのか。

七

答えは「罪と罰」が与えてくれるようでもあり、また与えてくれないかも知れない。

が、とにかく鶴雄は若い青年らしく、小説の中に、人生問題を性急に求めていたから「罪と罰」の面白さは、単なる小説の面白さ以上であった。

だから、憑かれたように夢中に読み耽っていたので、弓子が桔梗家へ来たこともふと忘れてしまっていた。

また、鈴子が小郷や弓子や君勇と一緒にキャバレーへ出掛けたことも、そして、弓子を除いた連中が帰って来たことも知らなかった。

――ラスコリニコフは老婆の顔をにらみつけながら、斧を振り上げた。が、その時ふっと自分から力が抜けてしまったのを、ラスコリニコフは感じた……。

そこまで読んだ時、鶴雄はほっと溜息をついた。

「ラスコリニコフには人が殺せなかったのだ。