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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
七
「どんな用事じゃ、お前きいとけ!」
「それがね、ここじゃちょっと言いにくいけど、とにかく会った方がいいわ。――うちのことで投書がはいってるのよ」
「今、帰れん」
「そんな事言っても……。困ったなア。じゃそっちへ行って貰いましょうか。でも、婦人記者だし、先斗町へなんか行って貰えないし……」
「婦人記者……?」
小郷はふと興味を感じたのか、
「じゃ、こっちへ寄越すようにしてくれ」
七
受話機を掛けた拍子に、小郷はじっとこっちを見つめている視線に打っ突かった。
鶴雄であった。
挑み掛るような視線だったが酔っぱらっていた小郷は、べつにそれを気にすることもなく、そのまま二階へ上って行った。
「なるほど、あいつが小郷か」
と、鶴雄は後姿を見送っていたが、ふと、電話での小郷の口振りでは、どうやら弓子が二階の小郷に会いに来るらしいと想い出すと、そわそわと食事を終って、自分の部屋へ引き揚げてしまった。
「こんな家であの女に会うのはいやだ」
と、思ったのだ。
その時、
「おおけに。今晩は……」
と、玄関で若い女の声がした。
鶴雄はみるみる赧くなった。
顔を見なくても、鈴子の声だとは、さすがにすぐ判ったのだ。