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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

五

「作家の小田君……小田策之助だ、君の先輩だよ」

と、紹介した。

鶴雄は立ち上って、やっぱり作家だったのかと思いながら、頭を下げた。

「こちらは三高の梶鶴雄君だ。――三高一の美少年だ」

山吹先生がそういうと、小田策之助はすかさず、

「じゃ、昔の僕と同じだ。僕は三高にいた頃、やはり三高一の美少年といわれたよ」

と、済ました顔で云った。

すると、回転椅子に掛けて、つかぬライターをしきりにカチカチさせていた男、世界文学社の若い社長で小田と同窓だったという島野二三夫がいきなり、

「云われたよって、誰にだ……?」

「誰もかれもそう云ってたよ。もっとも、君を除いてだが……。あはは……」

と、笑っていたが、小田は急に鶴雄の方へ向くと、

「――君は何年ですか」

「三年です」

「文科……?」

「ええ」

鶴雄がそう答えると、

「じゃ、もしかしたら君は僕と同じクラスになるかも知れないよ」

「えっ……」

「僕はもう一ぺん三高へはいるかも知れないんだ」

小田は真面目な顔で云った。

五

鶴雄は呆れてしまった。

小田策之助――三十男で、おまけに三高出身の作家として知られているこの男が、もう一度三高へ入学するとは、一体どうしたことであろうか。