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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

三条河原町

一

三条河原町

一

学生たちがセンター(中心)と言っている三条河原町に夜がするすると落ちて来ると、もとの京宝劇場の、進駐軍専用映画館の、「KYOTO THEATER」の電飾文字の灯りが、ピンク、ブルー、レモンイエローの三色に点滅して、河原町の夜空に瞬きはじめる。

丁度それと同じ頃だ、キャバレー歌舞伎の入口の提灯に灯りがはいるのは――。

提灯の色はやはりピンク、ブルー、レモンイエローの三色だ。

ここはもとアイススケート場だった。

アイススケート場が出来た頃、朝日会館と並んで、三条河原町の最もハイカラな建物といわれたが、しかし、今そのハイカラな建物に古風な提灯がついている。

これが京都なのだ、今日の京都だ。

新しさと古さの奇妙な交錯といえば、キャバレー歌舞伎という名前がそれだ。

終戦後の京都にいち早く出来た新しい設備は、キャバレーだ。そしていくつかのキャバレーのうち代表的なのは、三条河原町のそれが、しかもこの代表的なキャバレーに選ばれた名は、古風の象徴とでもいうべき「歌舞伎」だった。

ダンスと歌舞伎――。

松竹が経営しているとはいうものの、やはり奇妙な対照だった。